「正直なところ、ほっとしている」…自動車税制の議論本格化、「環境性能割」は廃止に
専門家の視点
自動車税制の転換点には三つの層のズレが重なっています。実体として、環境性能割廃止は消費税との二重課税という制度矛盾の解消であり、購入時の負担軽減という点では確かな前進です。同時に、道路維持を担う地方財源の減少という物理的制約も動かせない事実として存在します。物語の層では、業界と経済産業省が「需要活性化」を前面に掲げ、脱炭素やインフラ維持という長期的課題を後景に置いています。この物語が実体より先に走っているのが現状であり、EV購入補助金の増額と重量課税強化が同時進行する非対称性がその象徴です。期待の層では、自販連が4月以降の需要回復を見込みますが、1〜3月の登録車6.4%減は税制変更前の駆け込み需要の反動であり、廃止効果を織り込み済みとも解釈できます。ここでの構造的論点は「誰が将来の道路コストを負担するか」です。重量課税はEV購入者を事実上の賦課対象とし、脱炭素の主体にインフラ維持費を転嫁する仕組みです。補助金で入口を厚遇し、保有段階で回収する設計は、政策の時間軸が短期的販売促進と中長期的財源確保で分裂していることを示します。
自動車産業の変革を妨げない税制のあり方が問われている(イメージ) 2026年度税制改正で車の購入時にかかる地方税「環境性能割」が廃止された。ユーザー負担の軽減による国内自動車販売の活性化を狙う一方、道路網の管理を担う地方財源が減る。年末には道路の劣化を早める重い車への課税強化や、環境性能に応じた税優遇などの検討が本格化する見通しだ。産業活性化や道路維持、脱炭素対応をどう並立させるか。自動車産業の変革を妨げない税制のあり方が問われている。(大川諒介) 「正直なところ、ほっとしている」。大手自動車部品メーカー幹部は、25年末に決まった26年度税制改正の方針を聞いて胸をなでおろした。当時、最大の焦点は自動車取得時にかかる税のあり方だった。環境性能割は消費税と別に燃費性能に応じて0―3%が課される地方税。自動車購入時の実質的な二重課税だとして、制度簡素化やユーザー負担軽減を求める業界や経済産業省が見直しを要望してきた。 環境性能割は当初、2年間の課税停止で調整が進んだが、自民党と国民民主党の協議を経て廃止が決定。同幹部は「中長期的な需要への影響を考えると、廃止が最も望ましい形だ」と歓迎する。 消費者も反応を示した。日本自動車販売協会連合会(自販連)・全国軽自動車協会連合会(全軽自協)によると、1―3月の国内新車販売台数は前年同期比2・5%減。軽自動車が新型投入効果で同4・7%増の47万4879台と伸びた一方、減税効果が大きい登録車は同6・4%減の77万8478台だった。自販連は4月の環境性能割廃止を前に「様子見や買い控えの動きが広がった」として、4月以降の需要の伸びに期待する。 さらに、政府はクリーンエネルギー自動車(CEV)購入の補助金について、電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHV)への補助上限を増額。1月以降のEV購入者は最大130万円(前年は同90万円)の補助金が国から支給され、一部自治体では独自の補助金を併用できる。 26年の税制や補助金の変更は多くの人にとって「自動車購入の税負担が減り、保有時の負担額もあまり変わらない」(経産省幹部)と言える。税の簡素化や国内自動車市場の活性化に一定の貢献が見込まれ、雇用や技術力、サプライチェーン(供給網)を守るために内需拡大は重要だ。一方、8割超の道路網の維持管理を担う地方自治体の税収への配慮が課題だ。 「27年度税制改正は(車の)保有時の課税のあり方が大きな論点になる」。自民党税制調査会の非公式幹部(インナー)で党自動車議連の西村康稔会長は先を見据える。税制は与党税調の関与が強く、方針が定まりにくい案件ほどインナーの影響力は大きい。 政府は自家用EVなどの車検時に、車体重量に応じて自動車重量税に上乗せする措置の導入を28年5月に目指す。エンジン排気量に応じて課す自動車税(種別割)にもEVや燃料電池車(FCV)の重量に対する加算措置を28年度以降に導入する方針も示した。26年度改正では年末にそれらの税額を具体化させつつ、「重量や環境性能に応じた税負担の仕組みなどで結論を得る」と明記した。 EVやFCVは内燃機関(ICE)車と比べて車体が重く、道路への負担が大きい。重量に応じて税額が増える仕組みを導入し、道路維持などの財源確保を図る。ただ、経産省幹部は「旧環境性能割などの減収分を補うことは難しい。方針通りにまとまるかは分からない」と打ち明ける。 国の方針通り、重いEVへの課税が強化されれば購入時の補助金が手厚くなる一方、保有時の税負担は増す状態になる。輸入車幹部は「充電インフラなど完成車メーカー(OEM)以外も業界を挙げてEV化に相当な先行投資をしてきた。普及に水を差すような形にならないでほしい」と話す。今後の自動車税制の行方は、持続可能なモビリティー社会の構築に向けた試金石になる。
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