鉄鋼、社会課題解決へ攻勢 脱炭素・省人化に照準 - 日刊工業新聞
鉄鋼業界が脱炭素や省人化などの社会課題解決に攻勢をかける方針を打ち出した記事
専門家の視点
国内鉄鋼業の脱炭素と省人化への攻勢は、実体としての技術開発と設備投資が先行する一方、その社会実装を担う人材と制度の整備が追いついていない構造です。特に水素還元製鉄のような革新的プロセスは、技術実証から商業運転までに長い時間軸が必要で、その間の投資回収リスクを誰が負うのかという実行レイヤーの議論が不足しています。記事は設備や技術の攻勢を伝えますが、カーボンプライシングや水素供給インフラといった事業環境の整備という、企業努力だけでは解決できない制度面の進捗が省略されがちです。ここでの隠れた前提は、鉄鋼各社が単独で全ての課題を解決できるという考え方ですが、実際には電力や水素を供給する他産業や国との連携なしには成立しません。次の観測点は、各社の実証プラントが計画通りに稼働し、コスト競争力のある水素価格が実現するかです。脱炭素は設備投資だけでなく、産業全体の構造転換を伴うため、その移行期間をどう資金調達するかが、業界の将来を左右する決定的な判断になります。現時点では、技術の物語が実体に先行していると言わざるを得ません。