米証券取引委員会(SEC)。前委員会で制定した気候変動情報開示規則を正式に撤回するため、政府部内での撤回承認の手続き実施。米企業の気候情報開示はISSBを参照か(RIEF) - 一般社団法人環境金融研究機構
米SECが前委員会で制定した気候変動情報開示規則を撤回する手続きを開始し、米企業の気候情報開示はISSB基準を参照する可能性がある
専門家の視点
気候情報開示を巡る米国の政策は、物語先走りから実体欠落へと位相を転換しています。前政権が掲げた気候変動対応の物語は、規則撤回という形で実体から切り離され、現在の米国市場には企業の開示義務に関する明確な物語が存在しない状態です。 この空白が生む最大の構造的論点は、情報の非対称性です。SEC規則が消失すれば、投資家は企業の気候リスク情報を任意開示に依存せざるを得ず、比較可能性が損なわれます。一方で、ISSB参照という選択肢は、国際的なサステナビリティ開示基準との整合性を保つ現実的な経路ですが、米国内の法的強制力が無い限り、その実行レイヤーは企業の自主性に委ねられます。 ここで隠れた前提を問い直します。開示規則の撤回が即座に「脱規制」を意味するわけではなく、カリフォルニア州やEU域内事業を通じた規制の輻輳が残存します。米国企業は連邦規則の不在と州・国際規則の存在という、矛盾する二重構造を同時に生きることになるのです。 次の観測点は、SECがISSB基準を任意適用の形で「参照」するのか、それとも完全に沈黙するのかです。