長野県の脱炭素戦略、物価高騰で関心低く 2050年度の「実質ゼロ」達成に向け新局面
専門家の視点
物価高騰という生活直結の課題が、脱炭素という長期的な公共財への関心を上回る構図は、日本の大半の自治体に共通する構造です。長野県の戦略は30年度までに10年度比6割減という具体目標を掲げ、再生可能エネルギー生産量の倍増も明示しています。実体としての計画は存在するのです。しかし課題は、物価高騰で家計の余裕が失われると、省エネ基準適合住宅への建て替えや再エネ設備導入のような初期投資が大きい行動が先送りされる点です。これは期待欠落の構造であり、政策の善し悪しではなく、市民の行動原理が「目先の生活防衛」に傾く時間軸の不一致が原因です。制度は導入され、技術は普及段階に入りましたが、実行レイヤーである家庭や中小事業者の腹落ちが追いついていません。知事が「リードする」と言う物語は壮大ですが、それを日々の選択に翻訳する仕組みが弱いのです。次の観測点は、県が物価高騰下で省エネ改修への補助金や融資の利子負担軽減といった「行動を起こすための橋渡し」を増額できるかどうかです。それができなければ、30年度目標までの残り期間を考えても、物語先走りのまま期限を迎える結末が見えています。
会員記事紙面ビューアーで見る松沢建設が施工した住宅。法改正に伴い、昨年4月に義務化された「省エネ基準」に適合している=4月29日、須坂市〈阿部県政の行方 政策の現在地(2)〉 「将来世代への責任を念頭に、長野県から脱炭素政策をリードしていく」。阿部守一知事は3月27日の記者会見で、この日改定した県の「ゼロカーボン戦略」(2021~30年度)に引き続き取り組む決意を強調した。 ゼロカーボン(脱炭素)戦略は、30年度までに県内で排出される温室効果ガスを10年度比で6割減らし、50年度の「実質ゼロ」を掲げる。再生可能エネルギー生産量も10年度比で30年度までに2倍、50年度までに3倍へ増やすと掲げ、家庭や事業者ごとの取り組み方針を示す。
本文は配信元の記事から取得した抜粋です。
配信元の記事を読む →