岐阜のバイオマス発電、FIP転+バーチャルPPAで売電 - ニュース - メガソーラービジネス plus
専門家の視点
岐阜県内で稼働するバイオマス発電所がFIP制度へ転換し、バーチャルPPAを通じて外食チェーンへ環境価値を供給する構図です。ここで重要なのは、物理的な電力の流れと環境価値の取引が分離された点です。発電所の実体はFIP認定により市場連動型の収入を得ながら、環境価値だけを別契約で売却する二段構えの構造になっています。年間4000トンのCO2削減という数字は、外食チェーンのScope2削減として計上される一方、発電所側のFIP収入との重複計上リスクが制度的な論点として残ります。注目すべきは、バイオマス発電がFIPに転換する動機です。固定価格買取制度の終了後に市場リスクを負うか、長期契約で安定化させるかという経営判断の分岐点にあります。バーチャルPPAはその回避策として機能しますが、非化石証書の取引価格が下落すれば経済合理性が崩れます。構造のズレは、制度設計が再生可能エネルギーの普及拡大を想定しているのに対し、企業の脱炭素目標の達成手段として使われることで、環境価値の帰属が曖昧になる点です。次の観測点は、FIP転換後の発電所の稼働率と証書価格の推移です。
中部電力ミライズは5月1日、カヤバ、すかいらーくホールディングス、日本トムソンなどの顧客に向けて、岐阜県美濃加茂市の「美濃加茂バイオマス発電所」を活用したオフサイト型バーチャルPPA(電力購入契約)の仕組みで売電を開始した。 同発電所の発電出力は7.1MW、年間発電量は一般家庭1.6万世帯分に相当する約5000万kWh。燃料には、地域で発生する未利用間伐材などを活用する。事業主体は、中部電力、佐合木材(岐阜県美濃加茂市)、三菱HCキャピタルが共同出資する「合同会社美濃加茂バイオマス発電所」。2023年10月から運転を開始した。 運転を開始した当初は、固定価格買取制度(FIT)に基づき売電していた。買取価格は未利用材は32円/kWh、一般材は24円/kWh。今回の取り組みでは、フィード・イン・プレミアム(FIP)に転換し、生み出した環境価値を非化石証書として取得する。バイオマス発電は、再生可能エネルギー電源のなかでも出力が安定しており、自然環境に左右されず発電できるため、顧客は安定して環境価値を調達できる。 取得した環境価値は、アテナ工業(岐阜県関市)、FTS(愛知県豊田市)、カヤバ、小島プレス工業(豊田市)、プラマック(豊田市)、豊和化成(豊田市)、丸和電子化学(豊田市)、協和電機化学(埼玉県飯能市)、すかいらーくホールディングス、鍋屋バイテック会社(関市)、日本トムソンの11社を含む顧客へ供給する。年間約2.1万tのCO2排出量を削減できる見込み。 このうちカヤバは、グローバル目標(カヤバ7拠点、連結子会社国内6社・海外18社)として、スコープ1・2(直接排出と購入電力による間接排出)のCO2排出量の2030年に2018年比50%削減、2035年の同71%削減、2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げる。今回のバーチャルPPAによる環境価値の調達により、年間約4000tのCO2削減に寄与するとしている。 すかいらーくホールディングスは、中部エリアの12店舗へ同バーチャルPPAで環境価値を割り当てる。対象店舗では電力のCO2排出量が実質ゼロになり、年間約1030tのCO2削減を見込んでいる。これにより、環境配慮型店舗(ガスト東村山市役所前店)と合わせて計13店舗でCO2排出量実質ゼロで店舗を運営する。 日本トムソンは、約500万kWh相当分の環境価値を取得し、年間約2055tのCO2排出量を削減できる見込み。同社グループ温室効果ガス排出量削減目標の基準年度である2022年度実績(3万1942t、6173万1000kWh)に対して、約6.4%の温室効果ガス削減と約8.1ptの使用電力の再エネ化率向上を見込んでいる。 同社グループでは、2050年度カーボンニュートラル実現に向けて、2030年度にスコープ1・2(直接排出と購入電力による間接排出)の42%以上削減、スコープ3(サプライチェーンによる間接排出)カテゴリ1の25%以上削減を目指す。また、2030年度までにグループ全体で使用電力の約50%を再エネ由来に置き換えることを目標とした再エネ調達を進めていく。 Copyright © 2026 Nikkei Business Publications, Inc. All rights reserved. このページに掲載されている記事・写真・図表などの無断転載を禁じます。著作権は日経BP、またはその情報提供者に帰属します。 掲載している情報は、記事執筆時点のものです。
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