SBTが新ルール、「削減実績」評価: オフセット依存や削減の先送りは不利に - オルタナ
専門家の視点
削減率を一律で求める方式から、過去の実績を加味した個別計画方式への転換は、制度の精緻化であると同時に、評価の厳格化でもあります。ここには「実体」と「物語」の間に明確なズレが生じています。実態として脱炭素を先行してきた企業は、将来の削減余地が小さく、新ルールでは不利になる可能性があります。これは、実績を上げた者ほど評価が下がり得るという逆説的な構造です。 今回の改訂は、オフセットや将来の技術革新への期待といった「物語」を排除し、測定可能な過去の削減量という「実体」だけを基盤に据えようとする試みです。しかし、肝心の「実行レイヤー」が欠落しています。新ルールの下で、具体的に誰がどのような頻度で削減計画の進捗を検証し、計画からの乖離に対してどのような措置を取るのか、その手続きが明確ではありません。制度が目標設定の在り方を変えても、その後の実行を監視する仕組みが伴わなければ、実効性は担保されません。 この改訂で問われているのは、企業の過去の努力ではなく、未来に向けた実行計画の質です。次の観測点は、新ルールの下で企業が提出する削減計画の具体性と、その計画に対するSBTiの検証プロセスです。
企業の温室効果ガス削減目標を認証する国際イニシアティブ「SBTi(サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアティブ)」は4月29日、温室効果ガス(GHG)の削減に関して新たなルールを打ち出した。従来は原則業種を問わず、年率4.2%の削減を求めていたが、新たなルールでは過去の削減実績を踏まえて削減計画を立てられるようにした。今回の改訂によって、単にSBT目標を掲げるだけでは評価されず、削減に向けた実行力が問われることになる。(オルタナ輪番編集長=池田真隆) SBTiが改訂したのは、「ACA(アブソリュート・コントラクション・アプローチ)」と呼ばれる削減手法だ。日本語では、「絶対量削減アプローチ」と呼ぶ。ACAは、多くの企業がSBT目標を設定する際に主要手法として採用する。 今回の改訂の最大の特徴は、「これまで実際にどれだけ削減してきたか」を重視した点にある。従来のACAでは、1.5℃シナリオとの整合を図るため、企業に対して年率約4.2%の削減を求める考え方がベースとなっていた。基本的には全企業に共通の削減率を求めていた。 ■脱炭素先行企業から「不利になる」という声も■改訂するも1.5℃目標そのものは変えない■オフセット依存や削減の「先送り」は不利に 株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。
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