【座談会レポート】岐阜の森から日本を変える――J-クレジットが創り出す、環境と経済の新しい ...
専門家の視点
岐阜の森林J-クレジットを地元企業が購入し、収益を森林へ還元する「環境価値の地産地消」の枠組みは、構造的な魅力がある一方で、その持続可能性に最大の論点があります。林業の現場は「お金にならない」という実体に長年苦しみ、今回の取り組みはその実体にJ-クレジットという新しい収入源を接続した点で画期的です。しかし、クレジット収益は森林整備の長期的なコストを本当に賄えるのか、そして購入企業が「環境価値の地産地消」という物語に共感し続けるのかが、この枠組みの成否を分けます。現状は、マテリアル東海やマルエイといった特定の企業の善意と、岐阜信用金庫の仲介という人的ネットワークに依存しており、これを制度化して地域全体のモデルへ拡張できるかが課題です。つまり、ここには「物語は成立しているが、実体としての経済的自立が未検証」という構造があります。次の観測点は、認証を受けた2025年11月以降、クレジットの販売が第3号、第4号と継続的に拡大し、森林組合の経営改善に実際に寄与するかです。
土砂流出などの防災機能や水の貯蔵機能など、地域にとって重要な役割を担っている森林。一方で「お金にならない」「負の資産」と言われ、所有する森林を手放す、いわゆる「山離れ」が問題となっています。岐阜県下呂市にて、その面積の9割以上を占める広大な森林を管理する南ひだ森林組合でも同じ問題を抱えていました。そこで同組合では、森林が持つ「CO2吸収源」としての環境価値に着目。所有者の皆さまへの新たな還元と、持続可能な森林経営を目指し森林J-クレジットの創出を決意されました。 森林J-クレジットの創出を通じて森林の新たな価値を創造し、地域と林業の未来を拓く/南ひだ森林組合さま その後、南ひだ森林組合から創出されたJ-クレジットが、岐阜信用金庫と連携した地元企業が購入し、その収益の一部が森林へ還元されるという、日本でみても大変ユニークな「環境価値の地産地消」の枠組みが構築されることになります。 今回は、この南ひだ森林組合から創出されたJ-クレジット購入企業第1号となっていただいた株式会社マテリアル東海より松下社長・丁専務、株式会社マルエイより澤田社長、この2社にJ-クレジットを紹介した岐阜信用金庫より高木部長にお集まりいただき、座談会を開催しました。なお、当座談会のファシリテーターには、J-クレジット創出サポートから2社への仲介までを担当した株式会社バイウィルより、代表取締役社長の下村雄一郎が務めました。 座談会の模様。右より株式会社マルエイ澤田社長、株式会社マテリアル東海松下社長、同丁専務、岐阜信用金庫より高木部長。(手前後姿はバイウィル下村) バイウィル下村:本日は座談会にお集まりいただき、誠にありがとうございます。株式会社バイウィルの下村でございます。 本日は、南ひだ森林組合様より創出されたJ-クレジットをご購入いただいた株式会社マテリアル東海様、株式会社マルエイ様、そして両社をご紹介いただいた岐阜信用金庫様をお迎えしております。サステナビリティや脱炭素への取り組み、また購入に至った経緯などについて詳しく伺えればと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。 さて、皆様からお話を伺う前に、まずは本プロジェクトの背景について私と岐阜信用金庫高木部長から説明させていただければと思います。 すべての始まりは、2023年7月に岐阜信用金庫様と弊社バイウィルとの間で締結した、J-クレジットに関するビジネスマッチング契約でした。 岐阜信用金庫と、岐阜県・愛知県の脱炭素・カーボンニュートラルの実現に向け、顧客紹介契約を締結 岐阜信用金庫高木部長:私ども岐阜信用金庫は金融機関の中では、比較的早い段階から脱炭素支援の取り組みを始めておりました。当時はまだJ-クレジットの創出にまでは至っていなかったのですが、たまたま県庁の方からご相談をいただきました。「岐阜県には森林面積が全国2位という豊かな資源がある。これを活用した脱炭素の取り組みができないか」というお話をいただいたことが、きっかけです。 岐阜信用金庫高木部長(右)とバイウィル下村(左) バイウィル下村:こうした経緯の中で、南ひだ森林組合様をご紹介いただく機会を頂戴し、J-クレジット創出の意義について説明させていただきました。最終的には「やらない理由はないね」と深くご理解いただき、ご契約に至ったのが2024年8月のことです。 下呂温泉の自然環境を守る、南ひだ森林組合と岐阜信用金庫、バイウィルが、J-クレジットを活用したカーボンニュートラルに関する連携協定を締結 森林由来のカーボンクレジットは、創出までに通常1年ほどの時間を要します。その工程は、まず「対象の森林がどれほどのCO2吸収能力を持つか」という計画値を登録するプロセスと、その後「計画通りに吸収されているか」を実証・確認する認証のプロセスに分かれています。これらの段階を経て、ようやく国から正式に認証される仕組みです。当プロジェクトにおいては、2025年11月にこの認証をいただきました。 バイウィル下村:それでは本題に入らせていただきます。貴社で現在取り組まれている脱炭素や環境保護に関する取り組みについて、詳しくお伺いできればと存じます。まずは株式会社マテリアル東海様より、お聞かせいただけますでしょうか。 マテリアル東海松下社長:私たちは産業廃棄物処理、すなわち環境事業に携わる企業として、創業当時から「埋め立て」ではなく「リサイクル」を推進してまいりました。具体的には、プラスチックの再資源化や、焼却時の熱エネルギーを再利用するサーマルリサイクルなど、資源を循環させる取り組みに注力しています。 マテリアル東海松下社長:サーマルリサイクルにおいて、弊社では廃プラスチック類をセメント製造の「仮焼炉」や「焼成炉」の代替燃料として活用しています。しか
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