制度・政策

【社説】脱炭素社会へ排出量取引の有効活用を - 47NEWS

47NEWS 2026-05-04
脱炭素社会実現に向け、排出量取引制度の設計と運用を効果的に進める必要性を指摘する社説。

専門家の視点

排出量取引の制度導入は進んでも、その価格シグナルが企業の設備投資判断に届くまでの経路が弱いままです。ここでの中心的なズレは、物語先走りの構造です。政府は市場メカニズムの効率性を強調しますが、実際の排出削減を実行する工場単位の省エネ改修や燃料転換には、数年のリードタイムと不可逆的な投資判断が必要です。炭素価格が将来も安定的に上昇する確信がなければ、企業はコスト増として捉え、投資を先送りします。この記事が当然としている前提は、排出量取引が価格を付けさえすれば削減行動を誘発するという考え方ですが、日本の製造業は長期の設備計画の中で投資を回収するため、現物スポット市場の価格変動には反応しにくいのが実態です。次の観測点は、政府が将来の炭素価格の下限を保証する制度設計を示すかどうかです。これを欠いたままでは、排出量取引は金融商品として回転するだけで、実体の排出削減には寄与しません。制度の枠組みと産業界の投資行動の時間軸をつなぐ仕組みが、現時点での最大の欠落です。

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